クレストスキンクリニック
ブログ記事
blog

医療脱毛レーザーの美肌効果とは?医療脱毛で毛穴も肌荒れも改善する理由

2025.03.08

カテゴリ… 脱毛コラム論文情報院内ブログ

はじめに

医療脱毛に使われるレーザーには、ムダ毛を減らすだけでなく肌を美しくする効果(美肌効果)があるのではないか?とよく話題になります。本記事では、レーザー脱毛の基本原理から、一般的によく使用される代表的な3種類のレーザー(アレキサンドライト755nm、ダイオード810nm、ヤグ1064nm)の特徴、それぞれの美肌効果のメカニズムについて、最新のエビデンス(主に査読付き論文を中心に厳選しました)に基づいて解説します。美容に関心のある一般の方から、美容医療に携わるスタッフの方まで、専門的な内容をできるだけやさしくお届けできたらと思います。


1. 医療脱毛とは?~レーザー脱毛の基本原理

(まず簡単に医療脱毛の原理について説明しますが、こちらはやや美肌のテーマからずれるため飛ばしていただいても大丈夫です)

医療脱毛とは、医療用の高出力レーザー機器を用いて毛根を破壊し、永久脱毛(またはそれに近い長期減毛)を行う美容医療です。レーザー脱毛の基本原理は「選択的光熱融解(Selective Photothermolysis)」と呼ばれます(Bhat2020)。これは、特定の色(波長)の光エネルギーを肌に照射し、それが毛のメラニン色素に選択的に吸収されることで熱エネルギーに変換され、毛根(毛包や毛母細胞)を熱破壊する仕組みです​。

これは、特定の色(波長)の光エネルギーを肌に照射し、それが毛のメラニン色素に選択的に吸収されることで熱エネルギーに変換され、毛根(毛包や毛母細胞)を熱破壊する仕組みです​。

一方で、その光の照射時間(パルス幅)を毛根の熱緩和時間以内に収めることで、熱が周囲の皮膚組織に拡散しすぎず、毛根のみを選択的に破壊して周囲の皮膚ダメージを最小限に抑えます​。これにより毛だけに効果を発揮し、肌への副作用を抑えることが可能になるのです。

レーザーの種類(波長)による違い: 医療脱毛で広く使われるレーザーには主に3種類あり、それぞれレーザーの波長が異なります。波長の違いは、光が皮膚内でどれだけメラニンに吸収されるか、そしてどの深さまで届くかに影響します(下図参照)​。代表的なものは以下の通りです。

  • アレキサンドライトレーザー(755nm): 波長755ナノメートルの赤外線レーザーです。3種類の中でメラニンへの吸収率が最も高いのが特徴で、毛の黒い色にエネルギーがよく吸収されます​。その分脱毛効果が高い一方、皮膚表皮のメラニンにも吸収されやすいため色黒の肌にはリスクが高く、主にI~III型程度の比較的明るい肌色の方に適しています​(数字が低いほど肌の色が白に近く明るい)。メラニンへの吸収が強いぶん、同じエネルギーならアレキサンドライトが最も毛に熱を与えやすいです​。例えば、1064nmのヤグレーザーに比べると755nmのレーザーは約3倍もメラニンに吸収されやすいというデータがあります​。そのため、少ないエネルギーでも効果を出しやすい反面、設定を誤ると表皮にダメージを与えやすいという側面もあります。

  • ダイオードレーザー(810nm): 半導体レーザーで、波長810nm前後(機種により808nmや840nmなどもあります)の波長のレーザーを出します。755nmよりやや波長が長いため皮膚の奥まで届きやすく、深部の毛まで届く利点があります​。メラニン吸収率はアレキサンドライトより少し低いですが、その分肌色の濃い人にも比較的安全に使いやすいバランスの良いレーザーです​。シミなどの表在色素への反応はアレキほど強くない反面、波長が長い分だけ皮膚内での散乱が少なく透過しやすいため、毛根への到達率が高いとされています​。シミに吸収されにくいことは表皮ダメージが少ないメリットでもあります。実際、シミの多い色素沈着した肌(色黒肌)では810nmダイオードの方が755nmより約4%多くエネルギーが毛根まで届いたとのシミュレーション結果もあります​。ダイオードレーザーは幅広い肌タイプ(おおむねI~V型)に対応できることから、現在多くのクリニックで導入されています。

  • ヤグレーザー(Nd:YAG 1064nm): ネオジウムヤグレーザーとも呼ばれ、1064nmの長い波長を持ちます。3種の中で最もメラニンに吸収されにくい特性があり​、例えば1064nmでのメラニン吸収は755nmに比べ約73%も低いという報告があります​。そのため表皮のメラニンによる副作用が起きにくく、色黒の肌(V~VI型)でも比較的安全に使えるレーザーとして知られています​。一方、メラニンへの吸収が弱いために毛への効果を出すには高いエネルギーが必要になります​(粗いイメージでは、1064nmで30J程度当てて初めて755nmの9J、810nmの11.5Jと同等の熱量が毛に吸収されるともいわれます​)。波長が長いぶん皮膚の非常に深い層まで到達し、太く深い毛(男性のヒゲなど)にも作用しやすいです。また、血中のヘモグロビンへの吸収もわずかながらあるため、血管にも影響を与えうる波長です。この特性から1064nmレーザーは、本来の脱毛用途だけでなく肌の赤ら顔治療やコラーゲン産生の促進など美容皮膚科の幅広い治療にも応用されています(詳細は後述します)。

これら3種の医療用レーザーはいずれも「毛のメラニンに反応して毛根を破壊する」という基本は共通ですが、その威力や安全域が肌質によって異なるため、患者さんの肌の色や毛質に応じてレーザーの種類や設定を選択することが重要です。

2. 医療脱毛と美肌効果の関係

では「レーザー脱毛をすると肌が綺麗になる?」といった疑問を耳にしたことがあるかもしれません。結論から言えば、医療脱毛レーザーには副次的に肌状態を改善する効果が期待できるケースがあります。一方で、「脱毛したら肌荒れしない?大丈夫?」という不安の声もあります。ここでは、レーザー脱毛と美肌の関係について、論文に基づいた根拠を踏まえながら解説します。

レーザー脱毛で肌が綺麗になる?その根拠は?

ムダ毛がなくなることで毛穴が目立ちにくくなり、自己処理(シェービング)によるカミソリ負けなども減るため、「肌触りがツルツルになる」「毛穴が引き締まったように見える」といった見た目上の美肌効果は多くの方が実感します。また、一部の研究では、レーザー脱毛によって肌の質感や色調に客観的な改善がみられたとの報告もあります。

例えば、埋没毛によるブツブツ(毛包炎)が改善するケースです。男性のヒゲや首元などに生じやすい毛嚢炎・偽毛包炎では、毛が皮膚に埋まって炎症や色素沈着を起こしますが、レーザーで毛自体を減らすことで炎症が治まり、肌のざらつきや色素沈着が大幅に改善します​(Jih2007)。実際、偽毛包炎の患者で810nmダイオードレーザーを3回照射したところ、炎症性の毛包丘疹が50%以上減少し、毛の密度も減ったという報告があります。​

また色黒の患者が多いこの症状に対して1064nmヤグレーザーを用いたところ、1回の治療でも病変部位の病変数が隣接する未治療部に比べ約1/6と大幅に減ったたとの結果もあります​。これらは脱毛レーザーが毛穴の炎症を鎮め、肌表面を滑らかにするのではないかとされている例です。

さらに、毛孔性苔癬(図参照:二の腕などの毛穴の角質づまりによるザラザラ肌)にもレーザー脱毛が有効だったとの研究があります。ある前向き無作為化比較試験では、毛孔性苔癬の患者に長波長アレキサンドライトレーザーを照射したところ、真皮コラーゲンの増生が促されて皮膚のざらつきと炎症が軽減し、赤みが25%減少したとの結果が報告されています​(Chen2023)

興味深いことに、この研究では810nmダイオードレーザーよりも755nmアレキサンドライトレーザーの方が赤みの改善効果が高く、患者の快適さの面でもQSヤグレーザーやフラクショナルCO2レーザーより良好であったとされています​。つまり、脱毛用レーザーの照射がコラーゲン産生を刺激し、肌のキメや発赤を改善する作用が示唆されたのです。

一方、毛の存在自体が肌をくすませて見せる要因になることもあります。例えば、ヒゲやムダ毛が濃いと、剃っても毛穴の中の毛幹が透けて青黒く見える(青髭や毛穴の黒ずみ)ことがあります。レーザー脱毛で毛そのものが減れば、こうした青みや黒ずみが解消され、肌のトーンが明るく見える効果も期待できます。実際、アレキサンドライトレーザーはシミ治療にも使われる波長で、肌の色ムラ改善に寄与する場合があります。

また、「レーザー脱毛 美肌」というキーワードでよく語られるものとして、ニキビや脂性肌への効果も挙げられます。脱毛レーザーの熱が毛包にある皮脂腺にダメージを与え、結果的に皮脂分泌が減ってニキビができにくくなる可能性があります​。例えば810nmダイオードレーザーを使った研究では、難治性のニキビ患者に2週間おきで3回照射し、約75%の病変減少を得たとの報告もあります​(Jih2007)

もっとも、ニキビに対する効果はレーザーの設定によるところも大きく、副次的なメリット程度に考えておいた方がよいでしょう。レーザーフェイシャルもニキビやニキビ跡の改善に使用されることもしばしばあります。

3msレーザーによるシミ・くすみ改善

アレキサンドライト(755nm)レーザー(長パルス)をシミ治療に応用した報告はいくつか存在します。代表的な前向き試験として、Trafeliら (2007) は18名を対象に可変パルス幅アレキサンドライトレーザー(3ms/20ms/40ms/60msを比較)で老人性色素斑を1回治療する試験を行いました​その結果、濃い色調のシミほど高い除去率を示し、パルス幅が短い(3ms)ほど低いエネルギーで病変の除去が可能でした​。著明な副作用もなく、一度の照射で76〜99%の病変消失が得られたと報告されています​。Güdükら (2023) 後ろ向き研究(症例39例)でも、長パルスのアレキサンドライトレーザー(5ms)による老人性色素斑治療で、約85%の患者において病変が改善し​、12.8%の症例で5年以内に再発を認めたものの、多くの症例で有効かつ安全に治療できたと結論づけています​。なおこの試験では東洋人III–IV型の患者の17.9%に一過性の炎症後色素沈着(PIH)が生じています​。

くすみへの応用については、エビデンスは限定的ですが報告があります。韓国のLeeらは顔の色素性疾患に長パルス755nmレーザーを初めて用いた研究を報告し、III–IV型の62例に対し3msパルスで全顔照射を1回行ったところ、44%の患者で肝斑を含む顔色素沈着の改善が得られたとしています​​(Chen2023)

以上のように、レーザー脱毛を行うことで「毛がなくなる」以外にも様々な肌の改善効果が得られる場合があります。


3. 各レーザーの美肌効果のメカニズム

それでは、前章で触れた美肌効果について、レーザーの種類ごとに少し掘り下げてみましょう。それぞれの波長ごとのレーザーがどのようなメカニズムで肌に良い影響を与える可能性があるか、査読付き論文のエビデンスとともに解説します。

アレキサンドライトレーザー(755nm)の美肌効果

アレキサンドライトレーザー(755nm)はメラニンへの吸収が強い波長であるため、色素性病変の治療にも応用されています。シミ・ソバカスの改善や肌のトーンアップ効果が期待できるレーザーです。

実際、755nmレーザーでシミやソバカスを治療した臨床研究では、1回の照射で病変の76~99%が消退したとの結果があります​。被験者18人(タイプII、いわゆる色白の方)を対象にした前向き研究で、一度の治療で大半の患者においてソバカス・老人性色素斑が高い割合で消失し、副作用も有意なものは認められなかったと報告されています​(Chen2023)​。このように、アレキサンドライトレーザーはスポット的な高エネルギー照射により表皮の過剰なメラニンを破壊・排出させることで、色ムラのない明るい肌に導くことができます。

ただし注意点として、パルス幅やエネルギー設定によって効果とリスクが大きく左右されることが知られています。例えば、ある研究では超短いパルス幅(0.1ms)の755nmレーザーを用いた場合は一度の照射でソバカスが「中等度~顕著」に改善したとあります。

この違いは、超短パルスによりメラニンだけを瞬間的に加熱破壊できた場合と、パルス幅が長すぎて周囲組織に熱が広がり炎症を起こした場合の差と考えられます。つまり、同じアレキサンドライトレーザーでも美肌目的で使う場合はパラメータの微調整が重要です。

アレキサンドライトレーザーの美肌効果としてもう一つ興味深いのは、前述の毛孔性苔癬の改善です。真皮コラーゲンの産生促進という観点から、755nmレーザーが肌質をなめらかにする可能性が示唆されています​。

毛孔性苔癬患者の試験で得られた「コラーゲン増生による肌のざらつき軽減」は、一般の健康な肌にも応用できるかもしれません。例えば肌のごわつきや軽度の小じわに対してアレキサンドライトレーザーを照射すると、マイルドな真皮加熱によってコラーゲンのリモデリングが起こり、長期的にハリが出る可能性があります。ただ、これを目的に実施する場合は脱毛用の高出力そのままではなく、低フルエンスで複数回施術するなど工夫が必要でしょう。事実、レーザー機器メーカーによってはアレキサンドライトレーザーに「トーニングモード」を搭載し、弱いエネルギーでくすみ改善や美白を狙う施術を提供している場合もあります(Qスイッチレーザーのトーニングとは別物ですが、原理的にはメラニンに軽く作用させて徐々に排出を促す点で似ています)。

ダイオードレーザー(810nm)の美肌効果

ダイオードレーザーは脱毛の“ゴールドスタンダード”とも言われるほど広く使われていますが、実は美肌目的の応用研究も進んでいるレーザーです。毛穴の縮小や肌のキメ改善、さらには皮膚の引き締め(タイトニング)効果まで報告されています。

810nmの波長は真皮中層まで熱を届けることができるため、コラーゲン繊維の再構築を起こしうると考えられています。この仮説を検証するため、タイの研究グループが810/940nmのダイオードレーザーで顔のたるみ治療を行ったところ、4回の施術後に客観的な皮膚弾力の改善が認められたと報告しています​(Voravutinon2015)。具体的には、30人の顔のたるみ患者に3週間おき計4回の照射を行い、施術1か月後に測定した皮膚の弾力(カットメーターによる計測値)が有意に向上し、医師によるたるみ評価スコアでも治療前に比べて明らかな改善が示されました​。患者の満足度も高く、98%が結果に満足したとのことです​。こちら一般的に使用する脱毛でのパルス幅と同じものでした。この研究はダイオードレーザーによる非侵襲的なたるみ改善(スキンタイトニング)を裏付けるエビデンスと言えます。近年ではソプラノチタニウムを用いたチタニウムリフトなども行われていたりします。

また、ダイオードレーザーは「毛穴が目立たなくなった」という実感を生むケースもあります。毛が減ることで毛穴自体が縮小するのに加え、レーザーの熱で皮脂腺が萎縮し皮脂分泌が抑えられることが要因と考えられます。ある臨床報告では、高出力のレーザー脱毛を受けた後に「肌のテカリが減り、毛穴が引き締まった」と感じる患者がいることが述べられています​。実験的にも、810nmレーザー照射後に皮脂量の減少が示唆されるデータがあります​(ただし別の研究では皮脂測定値に変化なしとの結果もあり、一定ではありません​。)

ニキビへの応用も、ダイオードレーザーが注目されています。前述の通り810nmの長パルスレーザーで炎症性ニキビを約70%改善した例や、光増感剤と組み合わせて背中のニキビを治療した例もあります​。810nmは本来ヘモグロビン吸収が弱い波長ですが、高出力を当てることで皮脂腺破壊とP.acnes(ニキビ菌)への間接的な効果を発揮すると考えられています。ただニキビ治療専用の1450nmダイオード(スムースビーム)などと比べるとマイルドな効果なので、「脱毛のついでにニキビも治る」とまでは期待し過ぎないほうがよいでしょう。

総じて、ダイオードレーザーの美肌効果は「脱毛と同時に得られるプチ副次効果」から「専用モードで行う本格的な肌治療」まで幅があります。クリニックによっては、ダイオードレーザー機に美肌モード(SHR方式の連続照射や低出力多発照射)を搭載し、毛穴縮小・引き締め施術として提供していることもあります。エビデンスとしては​複数回照射でコラーゲンが増え肌にハリが出たという報告があるため、今後さらに研究が進めば“美肌レーザー”としてのダイオード一般化するかもしれません。

ヤグレーザー(Nd:YAG 1064nm)の美肌効果

ヤグレーザー(1064nm)は、その深達性の高さと安全性から美肌治療によく利用されるレーザーです。代表的なのはレーザー・ジェネシスと呼ばれる施術で、弱めの1064nmレーザーを連続的に照射し皮膚のコラーゲン産生を刺激して毛穴や小じわを改善するものです。また肝斑などの色素性疾患に対するレーザートーニング(QS-YAG)や、赤ら顔・毛細血管拡張の治療など多方面の美肌治療に使われています。

エビデンスとして注目すべきは、長尺パルス1064nmレーザーによるしわ・たるみ改善効果が明確に示された最近の研究です。2023年のケースシリーズ研究では、30人の患者に1か月おき合計3回のヤグレーザー照射(新型ハンドピースによる“in motion”テクニック)を行ったところ、治療3か月後の評価で患者の97%に肌質・しわの改善が見られたと報告されています(​Piccolo2023)。さらに興味深いのは、「レーザー照射によりコラーゲンが刺激されても表皮への損傷は起こさず、副作用やダウンタイムなく改善が得られた」と結論づけている点です​。これは1064nmレーザーが真皮を安全に加熱しコラーゲンリモデリングを誘導できることを示しています。

また、ヤグレーザーは皮脂腺や汗腺にもある程度作用すると言われており、脂性肌の改善汗腺縮小効果も模索されています。例えば、1064nmレーザーを用いた腋窩多汗症の治療も近年では行われます。これらは厳密には美肌というより医療治療寄りですが、結果的に肌の質感向上や清潔感アップに繋がる施術です。

このように、ヤグレーザーは「脱毛しながら美肌」を実現するポテンシャルが高いレーザーと言えます。特に色素沈着しやすいアジア肌にも安全に使えるので、日本人の肌質には適したレーザーです。ただし、脱毛単体で見ればヤグレーザーはアレキやダイオードより効果実感に時間がかかる傾向があるため、「美肌も欲しいけど脱毛も早く終わらせたい!」という場合は複数のレーザーを組み合わせるなどの戦略も考えられます(例えば顔の産毛脱毛にヤグレーザーでコラーゲンケアもしつつ、体の太い毛はダイオードで素早く減毛するといった使い分け)。


4. 美肌治療には脱毛と異なる設定が必要? ~パラメータの違い

結論から言えば、「美肌目的でレーザーを使う場合、通常の脱毛照射とはほとんどの場合で設定が異なります」。同じ機械・同じ波長でも、パルス幅(照射時間)やフルエンス(エネルギー密度)照射間隔冷却方法などを変えることで、狙う効果が変わってきます。いくつか具体例を挙げましょう。

  • パルス幅の違い: 脱毛では一般に毛包の熱緩和時間に見合った長めのパルス幅(数ms以上)を使います​。一方、美肌治療で表在の色素を飛ばす場合は極めて短いパルス幅(ミリ秒未満~ナノ秒台)が有効な場合が多いです。例えば前述のアレキサンドライトでソバカス治療の例では、0.1msの超短パルスで効果が出て​、3msでは効果が乏しかった​ことからも、この違いが分かります。短いパルスはQスイッチレーザー(ナノ秒)やピコ秒レーザーの領域になりますが、長尺レーザーでもパルス幅をできる限り短く設定することで近い効果を狙うことがあります。
  • フルエンス(エネルギー)の違い: 脱毛では毛を破壊するに足る高いエネルギーが必要ですが、美肌目的では中~低エネルギーを何度も当てるアプローチが多いです。たとえばレーザートーニングはメラニンにダメージを与えすぎないギリギリの弱出力で複数回に分けて施術します。同様に、脱毛レーザー機器でも「フォトフェイシャルモード」のように低出力連射で肌全体に穏やかな刺激を与えるモードがあります。逆にスポット的に強いエネルギーを入れてほくろやシミを取る場合もあり、これは脱毛よりさらに強力な設定ですが照射径を小さくして部分治療とします。要は、目的(広範囲のマイルドな美容ケア vs. 部分的な病変除去)によって適切なエネルギー量が全く異なるのです。
  • 冷却の有無: 脱毛では皮膚を守るため強力な冷却ガス噴射や冷却チップで表皮を冷やしながら撃ちます。しかし美肌治療では、冷やしすぎるとせっかく与えた熱がすぐ奪われて効果減となることがあります。実際、シミ治療の研究では「DCD(ダイナミッククーリング)を使わない方が病変部がしっかり熱破壊され効果が高い」との指摘もありました​。例えばジェントルシリーズ(755nm)のように冷却ガスを吹き付ける機種では、美肌目的の場合は冷却レベルを下げたりOFFにしたりして施術することがあります。但し患者の痛みは増すので、このあたりは装置の特性と狙い効果に合わせた調整が必要です。

以上のように、美肌治療を行うには脱毛モードからの切り替えや細かな設定変更が重要です。同じレーザーでも「何をターゲットにするか」で最適なパラメータは変わるため、専門知識を持った医療者が状況に応じて設定を決めています。クリニックによっては、脱毛とは別メニューで「美肌レーザーコース」を用意し、フィルター交換やモード変更により適切な施術を提供しています。患者側としても、「ただ毛を減らすだけでなく美肌効果も欲しい」と希望する場合は、その旨を相談すれば可能な範囲で設定を調整してくれるでしょう。

5. 副作用と注意点(美肌目的でレーザーを使う際)

レーザー脱毛で肌荒れしない?副作用のリスクは?

「強いレーザーを当てて肌は大丈夫?荒れたりしないの?」と不安に思われる方も多いでしょう。適切な設定・手技で行われた医療脱毛であれば、一時的な赤みやひりつきは起こっても、長期的に“肌荒れ”が残るリスクは低いとされています。実際、医療用レーザー脱毛の副作用発生率はごく低く、安全性は確立しています。​

755nmレーザー脱毛において一過性の色素沈着や色抜けといった副作用の発生率は4.5%未満であり、これらも大半は一時的で適切な経過観察や治療で改善する軽度なものでした​​(Chen2023)。特に最新の機器では冷却装置が充実しており、照射と同時に皮膚を冷やして表皮ダメージを最小限に抑える工夫がされています​。

その結果、照射後数時間~数日で自然に消失する軽い赤みや毛嚢周囲の膨らみ程度が一般的な反応で、深刻な火傷や瘢痕は稀です​。

とはいえ、肌質や施術条件によっては注意が必要です。色黒の肌では表皮メラニンが熱を吸収しやすいため、炎症後色素沈着(PIH)といって照射後に一時的に肌が黒ずむことがあります。特に日焼け直後の肌や、無理に高い出力で照射した場合に起こりやすいです​

また照射当日は軽い炎症状態になるため、人によっては一時的に肌が乾燥したり敏感になったりします。適切なアフターケア(保湿や日焼け止めの使用)は重要です。特に保湿をしっかりしていないと肌荒れが悪化したり長引いたりするため、薬や医療従事者だけでなく本人の努力やケアもとても大切になります。レーザー脱毛後は毛穴に細菌が入り一過性のニキビ様のブツブツとした毛嚢炎が出ることもありますが、ゲンタマイシンなどの抗生剤の塗り薬で治まる軽度なものがほとんどです。総じて、医療有資格者のもとで適切に行われる医療脱毛は安全性が高く、通常の範囲では“肌荒れ”を心配しすぎる必要はないでしょう。

また、毛の再生や硬毛化についても注意が必要です。 美肌目的で弱めのレーザーを当てた場合、中途半端な刺激で産毛が逆に太くなってしまう「硬毛化」が起こるリスクがあります。特に顔や首や背中、上腕など産毛の多い部位で報告されています。美肌施術中に毛が刺激を受けてしまうのが原因なので、防止策としては最初からしっかり脱毛も兼ねる設定にするか、あるいは怪しい産毛は事前に剃毛しておくなどの工夫が必要です。

過度の期待に対する注意も必要です。こちらは 副作用ではありませんが、患者さんの心理面で「美肌レーザーもやったのだから完璧になるはず」という過剰な期待が生じることがあります。脱毛ついでの美肌効果はあくまで“おまけ”程度で、専門のレーザー治療に比べればマイルドであるケースが多いです。効果実感には複数回の施術とアフターケアが必要なことも説明し、現実的なゴール設定を共有しておくことが大切です。

以上を踏まえ、医療脱毛レーザーを美肌目的で使う場合はリスクとベネフィットを医師と相談しながら進めることが望ましいです。幸い、これまで述べたように大きな副作用なくメリットを享受できる可能性が示されていますので、正しく怖がらず、しかし油断せずに取り入れていきましょう。

6. まとめと実際の美容医療への応用

医療脱毛レーザーの美肌効果について、仕組みから各レーザーの特徴、エビデンスまで解説してきました。最後にポイントを整理し、実際に美容クリニックで施術を受ける際の参考となる情報をまとめます。

  • レーザー脱毛は原理的に美肌と無縁ではない: 毛のメラニンを破壊する過程で、皮膚のコラーゲン産生や色素にも影響を与えるため、副次的な美肌効果が起こり得ます。特に毛穴の縮小、肌触りの改善、トーンアップは多くの人が感じるメリットです。
  • 3種類のレーザーそれぞれの美肌メリット:
    • 755nmアレキサンドライト: 色素への作用が強く、シミ・くすみ改善や美白効果が期待できます。肌のトーンアップやザラつき改善のエビデンスもありました​。反面、色素沈着リスクもあるので肌質次第では慎重に行うことがいいでしょう。
    • 810nmダイオード: 真皮への浸透力が高く、ハリ・弾力アップや毛穴縮小に効果が及ぶ可能性があります​。幅広い肌タイプに使え、複合的な効果を狙いやすい万能型。ただ即効性の高い美肌効果というより、回数を重ねてじっくり改善するイメージです。
    • 1064nmヤグ: コラーゲン産生や血管収縮によるしわ・たるみ改善、赤ら顔改善など深部の美肌効果が期待できます​。色黒肌でも安全に使え、「脱毛+肌質改善」を両立しやすいレーザーです。脱毛効果はマイルドなので、美肌優先の場合に適しています。
  • 美肌目的ならクリニックで相談を: 脱毛の予約時に「○○レーザーで美肌効果もあります」と宣伝している場合がありますが、具体的に何をしてくれるのか確認しましょう。通常の脱毛コース内で得られる美肌効果は限定的なことも多いです。本格的に毛穴やシミを治したいなら、美肌治療のメニューを併用する必要があるかもしれません。
  • 欲張りすぎない: 最後に、患者様側としては「脱毛もできてシミもシワも全部治したい!」と望みがちですが、一度に全てを得るのは難しいです。あくまでも第一の目的は脱毛ということを忘れないようにしましょう。

医療脱毛を検討している方は、「クレストスキンクリニック」にお任せください。

クレストスキンクリニックは、池袋と船橋にある医療脱毛専門クリニックで、清潔でゆったり落ち着ける完全個室を完備し、分かりやすいメニューと料金設定となっています。

正しい脱毛の知識と熟練された技術をもとに、しっかりとした脱毛効果を医療脱毛のプロが提供します。まずは、お気軽にお問い合わせください。

記事執筆

森口翔 M.D. Ph.D
森口翔 M.D. Ph.D
慶應義塾大学医学部卒業
慶應義塾大学医学部大学院博士課程修了
医療脱毛専門クレストスキンクリニック医師

月別アーカイブ

archive

アクセス・診療時間

273-0005
千葉県船橋市本町4-41-10
SADOYA Up Court 5F,7F
レディース5F・メンズ7F

船橋駅から信号渡らず徒歩4分

  • 診療時間
    月・水・土・日・祝:
    10:00~19:00
    木・金:
    12:30~21:30
  • 休診日
    火曜日
  • TEL
    0120-805-258
access

未成年者の方へ

クレストスキンクリニックでは、中学校1年生から脱毛の施術を受けていただけます。
未成年(18歳未満)の方、高校生の方は親権者様の同意がご契約の際に必要となります。

to minors