

悩ましいムダ毛処理。自己処理の煩わしさから解放してくれる脱毛は魅力的ですが、肌トラブルの不安を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。実は、脱毛、特にレーザー脱毛後には「毛嚢炎」という皮膚トラブルのリスクがあるのです。
150万人を超えると言われる日本の毛嚢炎患者数。誰しもが悩まされる可能性のある身近な皮膚疾患と言えるでしょう。 毛嚢炎は、毛穴に細菌が感染し、赤いブツブツやニキビのような炎症を引き起こします。痛みやかゆみ、場合によっては膿を伴うこともあり、見た目も気になりますよね。
この記事では、医療脱毛と毛嚢炎の関係性、その原因や予防策、そして万が一発症してしまった場合の対処法まで、詳しく解説します。正しい知識を身につけることで、安心して脱毛を選び、トラブルのない美しい肌を手に入れましょう。
毛嚢炎とは?症状・原因・好発部位を解説
毛嚢炎は、毛穴に細菌が感染して炎症を起こす皮膚のトラブルです。ニキビとよく似ていますが、毛穴が炎症を起こしている点が異なります。毛嚢炎は誰にでも起こりうる身近な皮膚疾患であり、適切なケアを行うことで改善が期待できます。この章では、毛嚢炎について、症状、原因、好発部位、そしてなりやすい人の特徴を詳しく解説していきます。

毛嚢炎の症状:赤み、痛み、かゆみ、膿
毛嚢炎の初期症状は、毛穴の周囲が赤くなることです。その後、中心部に小さな膿がたまり、ニキビのような見た目になります。多くの場合、触れると痛みやかゆみを感じ、炎症が強い場合は周囲の皮膚が腫れたり、熱を持ったりすることもあります。症状の程度は人それぞれであり、ほとんど自覚症状がない軽症の場合から、強い痛みや熱感を伴う重症の場合まで様々です。
症状 | 説明 |
---|---|
赤み | 毛穴周辺の皮膚が赤く見える炎症反応です。 |
痛み | 患部に触れると痛みを感じることがあります。 |
かゆみ | 患部にかゆみを生じる場合があります。 |
膿疱 | 毛穴に膿がたまった状態です。 |
腫れ | 炎症が周囲に広がり、皮膚が腫れ上がる状態です。 |
熱感 | 患部が熱く感じる状態です。 |
毛嚢炎の原因:細菌感染、摩擦、ムレ
毛嚢炎の主な原因は、黄色ブドウ球菌などの細菌感染です。健康な皮膚はバリア機能によって細菌の侵入を防いでいますが、このバリア機能が低下すると、細菌が毛穴に入り込み、炎症を引き起こします。例えば、脱毛処理後の肌はバリア機能が弱まっているため、毛嚢炎が発生しやすくなります。また、衣類との摩擦や刺激、ムレなども毛嚢炎の原因となります。特に、通気性の悪い衣類を着用したり、汗をかきやすい環境にいると、毛嚢炎のリスクが高まります。過剰な皮脂分泌や毛穴の詰まりも細菌の温床となり、毛嚢炎を誘発する可能性があります。
毛嚢炎の好発部位:顔、首、脇、陰部、太もも
毛嚢炎は体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に顔、首、脇、陰部、太ももなどは発生しやすい部位です。これらの部位は、摩擦やムレが起こりやすく、皮脂腺も多いという特徴があります。陰部周辺は特に蒸れやすく、下着との摩擦も多いため、毛嚢炎が発生しやすい場所です。顔や首は皮脂分泌が活発なため、毛嚢炎だけでなくニキビもできやすい部位です。脇や胸は汗がたまりやすく、衣類との摩擦も多いので注意が必要です。太ももは、座っている時間が長い人やタイトなズボンを履く人は特に注意が必要です。
毛嚢炎になりやすい人の特徴:肌が弱い人、免疫力が低下している人、汗をかきやすい人
毛嚢炎になりやすい人には、いくつかの特徴があります。肌が弱い人は、外部からの刺激に弱く、バリア機能が低下しやすいため、細菌感染を起こしやすくなります。免疫力が低下している人は、細菌に対する抵抗力が弱まっているため、毛嚢炎を発症しやすくなります。汗をかきやすい人は、ムレた環境を作りやすく、細菌が繁殖しやすいため、毛嚢炎になりやすいです。また、ホルモンバランスの乱れやストレスなども免疫力の低下につながり、毛嚢炎のリスクを高める可能性があります。
さらに、レーザー脱毛においても、肌の色が濃い患者に短波長のレーザーを照射すると、水疱などの副作用のリスクが高まるという研究結果が報告されています。適切なレーザーの選択が重要であり、例えば、色素沈着の多い肌には波長の長いNd:YAGレーザーを用いることで、副作用発生リスクを低減できる可能性が示唆されています。レーザー脱毛は医療行為であり、施術を受ける際には、医師とよく相談し、ご自身の肌質や部位に適したレーザーの種類を選択することが大切です。
毛嚢炎を早く治すための治療法3選
毛嚢炎は、毛穴に細菌が感染して炎症を起こす皮膚のトラブルです。痛みやかゆみ、赤いブツブツなどの症状が現れ、見た目も気になってしまうことがあります。放っておくと悪化することもあるので、早期の適切なケアが重要です。今回は、毛嚢炎を早く治すための治療法を3つのカテゴリーに分けてご紹介します。

医療機関での治療:抗菌薬、抗真菌薬
毛嚢炎の治療で医療機関を受診すると、抗菌薬(抗生物質)や抗真菌薬が処方されます。細菌感染が原因の場合は抗菌薬、真菌(カビ)感染の場合は抗真菌薬が用いられます。原因菌の種類によって適切な薬剤が異なるため、自己判断で市販薬を使用するよりも、医療機関を受診して適切な診断と治療を受ける方が安心です。
抗菌薬には、飲み薬(内服薬)と塗り薬(外用薬)があります。内服薬は体の中から細菌の増殖を抑え、外用薬は患部に直接塗布して炎症を抑えます。症状の程度や範囲に応じて、医師が適切な薬の種類と量を判断します。内服薬の方が効果が高い場合もありますが、副作用のリスクも考慮して処方されます。塗り薬は、患部にピンポイントで作用させることができるため、副作用が少ないというメリットがあります。
抗真菌薬にも、飲み薬と塗り薬があります。真菌感染の場合、患部だけでなく周囲の皮膚にも薬を塗布することがあります。これは、真菌が周囲の皮膚にも広がっている可能性があるためです。医師の指示に従って正しく使用することが大切です。真菌感染は、細菌感染よりも治りにくい場合があり、治療期間が長引くこともあります。
レーザー脱毛後の毛嚢炎は、レーザー照射によって皮膚のバリア機能が低下することや毛がなくなり最近が入りやすく、感染しやすくなっていることが原因の一つとして考えられます。レーザー脱毛は、毛根に熱エネルギーを与えて破壊する施術ですが、その際に皮膚にも軽度の炎症が起こることがあります。この炎症によって皮膚のバリア機能が低下し、さらに毛穴から毛もなくなっているため細菌が侵入しやすくなるのです。このような場合は、医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。重症例では、短期間のステロイド薬の内服や、抗菌作用のある過酸化ベンゾイルの外用薬が用いられることもあります。ステロイド薬は炎症を抑える効果が高いため、重症化した毛嚢炎の治療に用いられますが、長期的な使用は副作用のリスクがあるため、医師の指示に従うことが重要です。過酸化ベンゾイルは、ニキビ治療にも用いられる薬剤で、抗菌作用と角質剥離作用があります。
皮膚の色が濃い患者に短波長のレーザーを照射すると、水疱などの副作用のリスクが高まるという研究結果も報告されています。これは、短波長のレーザーはメラニン色素に吸収されやすいため、皮膚の色が濃いほど熱エネルギーが過剰に吸収されてしまうためです。適切なレーザーの選択が重要であり、例えば、色素沈着の多い肌には波長の長いNd:YAGレーザーを用いることで、副作用発生リスクを低減できる可能性が示唆されています。
家庭でできるケア:清潔にする、保湿する、刺激を避ける
毛嚢炎を早く治すためには、医療機関での治療だけでなく、家庭でのケアも大切です。まず大切なのは、患部を清潔に保つことです。清潔を保つことは、細菌の増殖を抑え、炎症を悪化させないために重要です。洗顔料やボディソープは、低刺激のものを選び、ゴシゴシこすらず優しく洗いましょう。香料や着色料など、添加物の多いものは刺激となる可能性があるので避けましょう。また、タオルで拭く際も、強くこすらないように注意が必要です。ゴシゴシこすると、患部を刺激して炎症を悪化させる可能性があります。
次に、保湿ケアです。炎症を起こした肌は乾燥しやすく、バリア機能が低下しています。保湿することで、肌のバリア機能を回復させ、細菌感染を防ぎましょう。低刺激の保湿剤を選び、患部とその周辺に優しく塗布します。保湿剤は、セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が含まれているものがおすすめです。
最後に、刺激を避けることも重要です。患部を触ったり、掻いたりすることは、炎症を悪化させる可能性があります。また、刺激の強い化粧品やスキンケア用品の使用も控えましょう。患部を刺激から守ることで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進することができます。例えば、アルコール成分の多い化粧水や、スクラブ入りの洗顔料などは、患部を刺激する可能性があるので避けましょう。
市販薬の選び方と注意点:抗生物質含有軟膏、イソジン
毛嚢炎には、市販薬を使用することもできます。抗生物質を含有した軟膏は、細菌の増殖を抑え、炎症を鎮める効果があります。フルコートf軟膏などが市販されています。イソジンは消毒効果があり、患部の殺菌に役立ちます。しかし、これらの薬はあくまでも一時的な対処法であり、症状が改善しない場合や悪化した場合は、自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。市販薬は、医師の処方薬に比べて効果が弱い場合があり、症状によっては十分な効果が得られない可能性があります。
市販薬を使用する際の注意点として、まずは使用前に説明書をよく読み、用法・用量を守ることです。また、使用中に皮膚の状態が悪化したり、アレルギー反応が出た場合は、すぐに使用を中止し、医師または薬剤師に相談しましょう。アレルギー反応は、かゆみ、赤み、腫れなどの症状が現れます。症状が長引く場合や重症化する場合は、自己治療をせずに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしてください。毛嚢炎は、適切な治療を行えば、多くの場合、比較的短期間で治癒します。
医療脱毛と毛嚢炎の関係
ムダ毛処理は、身だしなみを整える上で大切な要素です。カミソリや毛抜きといった自己処理だけでなく、エステサロンやクリニックでの脱毛も一般的になってきました。脱毛は、ムダ毛の処理の手間を省き、肌を清潔に保つのに役立ちます。しかし、脱毛後に肌トラブルが起こると、せっかくの脱毛効果も台無しです。脱毛後の肌トラブルで代表的なものが毛嚢炎です。
この記事では、医療脱毛と毛嚢炎の関係について詳しく解説します。特に、レーザー脱毛による毛嚢炎のリスクや原因、予防策、そして対処法に焦点を当てます。安心して脱毛を受けていただくために、正しい知識を身につけていただければ幸いです。
医療脱毛とレーザー脱毛の違い
「医療脱毛」と「レーザー脱毛」、似た言葉で混乱しやすいですが、実は少し違います。医療脱毛とは、医師または医師の監督下で看護師が行う、医療機関での脱毛の総称です。レーザー脱毛は、その医療脱毛の中で行われる代表的な方法の一つです。医療脱毛には、レーザー脱毛以外にも、針脱毛(絶縁針脱毛)などがあります。
レーザー脱毛は、黒いメラニン色素に反応するレーザーを照射して毛根を破壊する方法です。毛が生えてこなくなる効果が高く、広範囲の脱毛にも適しています。医療機関でしか扱えない出力の高い医療用レーザー機器を使用するため、永久脱毛に近い効果が期待できます。
一方、エステサロンで行われる光脱毛は、医療脱毛に比べて出力が弱いため、減毛効果はありますが、永久脱毛はできません。また、万が一の肌トラブルにも医療機関ほど迅速に対応できない可能性があります。医療機関では、医師が常駐しているため、肌トラブルが生じた場合でも迅速な対応が可能です。
医療脱毛で毛嚢炎になるリスクと原因
医療脱毛、特にレーザー脱毛は、毛嚢炎のリスクが全くないわけではありません。レーザーの熱で毛包がダメージを受け、そこから細菌感染を起こすことが原因の一つです。毛嚢炎は、赤いブツブツやニキビのようなものができ、痛みやかゆみ、場合によっては膿を伴うこともあります。
毛嚢炎になりやすい原因には、レーザー照射による皮膚のバリア機能の低下、毛穴の開き、細菌感染、肌のターンオーバーの乱れなどが挙げられます。レーザー脱毛は、毛根に熱エネルギーを与えて破壊する施術ですが、その際に皮膚にも軽度の炎症が起こることがあります。この炎症によって皮膚のバリア機能が低下し、細菌が侵入しやすくなるのです。加えて、レーザーの種類によってもリスクは異なり、一般的にアレキサンドライトレーザーは効果が高い一方で、熱の発生量が多く、肌への刺激も強いため、毛嚢炎のリスクはやや高めです。一方、YAGレーザーは肌への負担が少ないため、毛嚢炎のリスクも比較的低いとされています。特に、色素沈着の多い肌には波長の長いNd:YAGレーザーを用いることで、副作用発生リスクを低減できる可能性が示唆されています。
また、施術を受けるクリニックの衛生管理が不十分な場合や、施術後のアフターケアが適切でない場合も、毛嚢炎のリスクを高める可能性があります。施術を受けるクリニックを選ぶ際には、衛生管理状況やアフターケアの内容も確認しましょう。
レーザー脱毛で毛嚢炎になった時の対処法
レーザー脱毛後に毛嚢炎になってしまったら、まず清潔を心がけましょう。患部を優しく洗い、清潔な状態を保つことが大切です。ゴシゴシこすったり、刺激の強い洗浄料を使ったりするのは避けましょう。洗顔料やボディソープを選ぶ際には、低刺激のものを選び、ゴシゴシこすらずに優しく洗うようにしてください。また、保湿も重要です。低刺激の保湿剤で、肌の乾燥を防ぎましょう。保湿剤は、セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が含まれているものがおすすめです。
症状が軽い場合は、これらのセルフケアで改善することもあります。しかし、症状が悪化したり、1週間以上経っても改善が見られない場合は、自己判断せずに皮膚科を受診しましょう。医師の診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。医療機関では、抗菌薬の塗り薬や飲み薬、場合によってはステロイド外用薬が処方されることもあります。重症例では、短期間のステロイド薬の内服や、抗菌作用のある過酸化ベンゾイルの外用薬が用いられることもあります。
重症化すると、痕が残ってしまう可能性もあるので、早めの対処が重要です。
毛嚢炎を予防するための脱毛施術前にやるべきこと
毛嚢炎を予防するためには、脱毛施術を受ける前の準備が重要です。まず、施術を受けるクリニック選びは慎重に行いましょう。衛生管理が徹底されているか、医師や看護師の対応は丁寧か、施術後のアフターケアは充実しているかなどを確認することが大切です。
施術前は、肌の状態を整えておくことも重要です。日焼けは避け、肌を清潔に保ち、保湿をしっかり行いましょう。シェービングは、クリニックの指示に従って行い、肌を傷つけないように注意しましょう。また、当日は締め付けの強い服や刺激の強い下着は避け、ゆったりとした服装で行きましょう。施術後は、医師や看護師の指示に従ってアフターケアを行い、肌を清潔に保ち、保湿をしっかり行いましょう。
まとめ
毛嚢炎は、毛穴に細菌が感染して起こる皮膚の炎症です。赤み、痛み、かゆみ、膿などが主な症状で、顔、首、脇、陰部、太ももなどによく発生します。原因は細菌感染や摩擦、ムレなどです。肌が弱っている人や免疫力が低下している人は特に注意が必要です。
毛嚢炎を早く治すには、医療機関での治療や家庭でのケアが重要です。医療機関では抗菌薬や抗真菌薬が処方されます。家庭では、患部を清潔にし、保湿し、刺激を避けるようにしましょう。市販薬を使用する場合は、説明書をよく読んで正しく使い、症状が悪化したら医療機関を受診してください。
医療脱毛、特にレーザー脱毛は効果が高い一方、毛嚢炎のリスクも伴います。施術を受ける際は、クリニックの衛生管理やアフターケア、レーザーの種類などを確認し、施術前後のケアをしっかり行うことで、毛嚢炎を予防しましょう。万が一、毛嚢炎になってしまったら、清潔にし、保湿を心がけ、症状が改善しない場合は皮膚科を受診しましょう。
参考文献
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記事監修

- 森口翔 M.D. Ph.D
- 慶應義塾大学医学部卒業
- 慶應義塾大学医学部大学院博士課程修了
- 医療脱毛専門クレストスキンクリニック医師