
当院でも使用しているジェントルマックスプロプラスとジェントルマックスプロには、「アレキサンドライトレーザー」と「ヤグレーザー」の2種類のレーザーが搭載されています。医療脱毛を始めるにあたって、多くの方が目にしたり耳にしたことがあるワードではないでしょうか。
それぞれのレーザーについて様々な情報がSNSなどにあがっていますが、「結局どれが本当でどっちの方が効果があるの?」と疑問に感じることはありませんか?
そこで今回は、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの違いと使い分けについてご説明します。
アレキサンドライトレーザーとヤグレーザー
ジェントルシリーズにはアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの2種類のレーザーがあり、機器によって搭載されているレーザーが異なります。ジェントルマックスプロなどのように、どちらのレーザーも搭載されている機器もあれば、アレキサンドライトレーザーのみだったりヤグレーザーのみの場合もあります。
レーザーを構成する物質
そもそも、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーとはどのようなものなのでしょうか。
アレキサンドライトレーザーはその名の通り、アレキサンドライト鉱石を使用したレーザーです。アレキサンドライト鉱石は宝石として装飾品などに利用されますが、人工的に合成することが可能であり、医療用レーザー脱毛の装置にも用いられています。
一方、ヤグレーザーはローマ字で「YAGレーザー」とも表記されますが、こちらはヤグレーザーを構成する3つの物質の頭文字を取ってつけられた名称です。その物質というのが、イットリウム(Yttrium)、アルミニウム(Aluminum)、ガーネット(Garnet)になります。ヤグレーザーはこの3つの物質に加える添加物の違いによって用途が異なり、美容医療の分野だけでなく溶接や材料加工、切断などの工業用としても利用されています。
レーザーは、このような媒体となる物質を光源装置によって刺激することで光を放出させ、レーザー光として出力させる仕組みになっています。
レーザーごとの特徴
では、それぞれのレーザーの特徴についてみていきましょう。
まず、アレキサンドライトレーザーの特徴で最も重要なポイントは、一般的な日本人の肌色と毛質に最適という点です。アレキサンドライトレーザーはメラニンへの反応が良いため、毛が黒く肌色が黄褐色の日本人の肌事情においては、レーザーの熱エネルギーが毛に十分吸収されやすいという利点があります。
反対に、体毛が金色や栗色など色素が薄い方の場合、発毛組織を破壊するだけの十分な熱エネルギーが毛に吸収されず効果を出せなかったり、肌色が褐色の方の場合、皮膚のメラニンに熱エネルギーが吸収されてしまいやけどを起こすリスクが高まるなど、アレキサンドライトレーザーが適していません。
では、ヤグレーザーの特徴はどうでしょうか。ヤグレーザーは、アレキサンドライトレーザーと比較するとメラニンへの反応の良さは劣りますが、皮膚のより深い位置まで届くという特徴を持っています。これにより得られるメリットとして、ある程度の濃さであれば肌色が暗い方でも安全に脱毛が出来るという点と、皮毛角(皮膚と毛が作る角度のこと)が大きく毛根が深い位置にある毛(男性のヒゲなど)で効果を出しやすいという点が挙げられます。
メリット・デメリット
以下に、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーそれぞれの特徴をまとめました。
アレキサンドライトレーザー | ヤグレーザー | |
---|---|---|
特徴 | ・メラニン吸収性が高い ・皮膚の中間層くらいまで届く ・比較的痛みが少ない ・太くて黒い毛に効果的 ・産毛や細い毛には効きにくい | ・メラニン吸収性が低い ・皮膚の深いところまで届く ・痛みを感じる方が多い ・直角に生えている毛に効果的 ・産毛や細い毛には効きにくい |
メリット | ・日本人の肌色と毛色に最適 | ・肌色が暗い方でも安全に使用できる ・毛によっては効果を出しやすい |
デメリット | ・肌色が暗い方ではやけどのリスクが高い ・産毛や細い毛には効果を出しにくい | ・アレキサンドライトレーザーよりも効果が落ちる ・産毛や細い毛には効果を出しにくい |
レーザーとひとまとめに言っても、種類によってそれぞれにメリット・デメリットがあるため、肌状態を見ながら安全性や効果などを考慮し使い分けることが必要となります。どちらかが必ず良いというわけではなく、おひとりおひとりに合わせて使い分けることがベストな方法なのです。
効果の限界
アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーのどちらのレーザーにも共通するデメリットとして、「産毛や細い毛に効果を出しにくい」という点があります。この点については、レーザーの種類に限らず脱毛全体において課題となっています。
メラニンと効果の関係性
医療レーザー脱毛は、レーザーの熱エネルギーを毛に吸収させることで発毛組織にダメージを与え破壊するという仕組みですが、十分な量を吸収させるためには毛に含まれるメラニンが重要なポイントとなります。
レーザーの熱エネルギーは、毛のメラニン、皮膚のメラニン、ヘモグロビン(血管)、水分といった人体を構成する様々な物質に吸収されます。それぞれの物質に対する吸収率はレーザーによって異なりますが、どのような肌色や毛質であっても、毛に対してのみレーザーを100%吸収させるのは不可能ということになります。
太くしっかりとした毛と細い毛では、メラニンの含有量が数倍~10倍以上差があると言われています。熱エネルギーが毛のメラニン以外にも吸収されてしまう中、細くてメラニンが少ない毛には十分な量が行き届かないことがほとんどであり、それにより産毛や細い毛には効果を出しにくいのです。
「効きにくいなら出力を上げればいいんじゃないの?」と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、出力を上げればその分やけどや肌トラブルのリスクは高まりますし、照射中の痛みも強くなります。当院では、そのバランスを見ながら照射ごとに設定を行っておりますが、これには患者様の肌状態なども大きく関わってきます。
満足できる結果を出すために
照射の設定には患者様の肌状態が大きく関わるとお伝えしましたが、その点においては患者様ご自身でのセルフケアも重要となります。
当院では、レーザー脱毛を受ける際の注意点として、特に日焼けと乾燥について十分に対策していただくようお願いしております。これら2つは、レーザーの熱エネルギーが毛に吸収されることを阻害したり、照射時の出力を抑えることにつながる大きな要素であり、結果として満足のいく効果が得られない原因となります。毛周期に合わせて通院していただくだけでなく、施術の前後においてもご協力いただくことが不可欠なのです。
毛質や肌色、効果の状況などを見ながら設定の調整やレーザーの使い分けを行うにあたって、患者様に十分なセルフケアを行っていただくことは、良い結果を出すためにも欠かせない大切なポイントです。
日焼け対策や保湿については以前の記事でも取り上げておりますので、そちらもぜひご覧ください。
まとめ

それぞれのレーザーの違いについて、なんとなく掴んでいただけましたでしょうか?
レーザーごとの特徴を踏まえると、一般的な肌色と毛質の日本人の場合、基本的にはアレキサンドライトレーザーを使用し、部位や毛の生え方によってはヤグレーザーを使用することで効果が得られやすいと言われています。
とはいえ、当院に通院されている患者様の中には、ヤグレーザーを試してみたい!、ヤグレーザーの方が効果を感じた◎という方もいらっしゃいますので、ご要望に応じて使い分けることも可能です。お気軽にご相談ください。
記事監修
森口翔 M.D. Ph.D
慶應義塾大学医学部卒業
慶應義塾大学医学部大学院博士課程修了
医療脱毛専門クレストスキンクリニック医師