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家庭用脱毛器の安全性: 市販後監視データの解析と評価

2023.03.22

カテゴリ… 脱毛コラム論文情報

家庭用脱毛器の安全性: 市販後監視データの解析と評価

家庭用脱毛器の市販後調査とその意義

市販後調査は、製品が広く市場に出回った後に、その安全性や効果について継続的に調査・評価を行う重要なプロセスです。家庭用脱毛器(具体的には光脱毛、IPL脱毛)に関する市販後調査は、消費者が安心して利用できる製品を選ぶための貴重な情報源となります。また、メーカーにとっても、調査結果をもとに製品の改善や安全対策を検討する上で有益なデータが得られます。先日アメリカのP&GのAnne M. Hattersleyらが報告していましたのでそのまとめです(Hattersley2023)

家庭用脱毛器の市販後調査とその意義

有害事象の報告

本研究では、6年間の市販後の安全性監視データを分析して、家庭用脱毛器の安全性について評価しました。全体的な報告率は、100,000台のIPLデバイス(家庭用脱毛器)に対して67件の有害事象が報告されていました。頻度が多かった項目は、皮膚の痛み、熱傷、および紅斑でした。2016年から2021年の間に報告された上位25の有害事象には、予想しないような有害事象は特にはなく、基本的にはこれまで通り知られているものでした。

より詳細には下記の図で表します。

有害事象の報告件数

分析の結果、有害事象のパターンは家庭用脱毛器に関する既出の論文報告と質的に類似していることがわかりました。さらに、低フルエンスの脱毛器の安全性に関する証拠が提供されており、市販後の調査分析とMAUDEデータベースから得られた有害事象と臨床研究との間も似ていました。

市販後調査によるデータでは、皮膚の痛みが最もよく報告される有害事象であり、316件の「火傷」のうち、大部分は軽度のものでした。また、「眼の痛み」に関しては、34件の報告がありましたが、家庭用脱毛器のリスクは基本的には国際基準の制限値を下回っていたため、危険なものという評価ではありませんでした。

専門家による予測では、家庭用脱毛器で起こりうる有害事象は、痛み/不快感(高い)、一時的な紅斑(中)、持続性紅斑(低い)、蕁麻疹(非常に低い)、色素沈着(非常に低い)、浮腫(低い)、眼の損傷(非常に低い)でした。(高いが有害事象の中でも90%以上、中が50%~90%、低いが1%未満、非常に低いが0.01%未満)でした。市販後調査の結果から、有害事象とその頻度の予測はほぼ似ているものでした。

この報告の限界点

しかし、この分析にはいくつかの限界があります。市販後の調査は自主的な報告によって行われており、実際は起こっているのに報告していないケースもあることが予想されます。そのため、有害事象の過小報告が起こる可能性があります。また、市販後の調査システムは家庭用脱毛器を購入した消費者をアクティブに追跡しないため、リスクにさらされている人口や対象人口は不明であり、選択バイアスが生じる可能性があります。さらに、有害事象の発生する確率は使用回数にも関連していると考えられますが、今回の市販後調査では使用回数については記載されていません。

また、データの不足や欠落も問題です。基本的なデモグラフィックデータが不明であり、例えば性別では46.4%、年齢層では67.4%が不明です。また、人種や民族性も収集されていません。そのため皮膚の色の情報もないためこの点はやや致命的とも言えます(肌の色が濃いほど火傷など一部の有害事象は起こりやすい)。

このような課題にもかかわらず、市販後調査データは消費者の安全性を評価する際に重要な役割を果たしています。本研究で示されたように、市販後調査は、有害事象の特性を明らかにするための重要な情報源であり、家庭用脱毛器の安全性を考える上では非常に大切な報告になります。

最後に、市販後調査のデータは、報告要件を満たすためだけでなく、科学的文献に貢献する価値のある情報源として大切です。調査データは、有害事象の特徴を明らかにするための重要な情報源であり、家庭用脱毛器の消費者の安全性を考慮する際には欠かせない要素です。将来的には、更なる研究が必要ですが、市販後調査データを活用することで、家庭用脱毛器の安全性に関する理解が深まることが期待されます。

まとめ

まとめると、家庭用脱毛器の市販後調査データを分析した結果、67件の有害事象が報告されましたが、予期しないまたは稀な有害事象はありませんでした。市販後調査データから得られた情報は、家庭用脱毛器の安全性に関する価値ある知見を提供していますが、データの不足や欠落が課題となっています。今後、市販後調査データの活用が更に進めば、家庭用脱毛器の安全性に関する理解が一層深まることが期待されます。

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記事執筆

森口翔 M.D. Ph.D
森口翔 M.D. Ph.D
慶應義塾大学医学部卒業
慶應義塾大学医学部大学院博士課程修了
医療脱毛専門クレストスキンクリニック医師

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