今回は家庭用脱毛器と眼の障害についてまとめたレビュー論文がありましたので紹介します(Fatimah J Al muqarrab 2023)。
家庭用脱毛器は比較的安価(安価と言っても数万円しますが、医療脱毛等に比べると安いです)で手軽に使用されているため、人気がありますが、その効果やリスクに関しては意外としられていません。
この研究の目的
この研究は、家庭用光脱毛デバイスの使用が眼障害を引き起こす可能性についてまとめています。IPL(Intense Pulse Light)やダイオードレーザーを使用するこれらの家庭用脱毛器が、眼への影響に関してどのようなリスクを持っているのかを明らかにすることを目的としています。これら家庭用脱毛器の安全性に関する知識はそこまで認識されておらず、情報も不足しているため問題となっていました。
市場の成長と問題点
家庭用脱毛器の市場は急成長しており、特にIPL技術を採用したデバイスが主流です。これらのデバイスは、アメリカではFDAが管理する医療機器、ヨーロッパでは美容に関する製品(cosmetic products)として分類されています。しかし、これらのデバイスの眼への安全性に関する情報や注意喚起は不足しており、消費者が安全性についての十分な認識を持たずに使用しているという問題があります。
研究方法について
この系統的レビューはPRISMAガイドラインに基づいて実施され、IPLやダイオードレーザー使用後の眼障害に関する論文をMedline、CENTRAL、Cochrane、Google Scholarデータベースから検索し、18の論文から20例の患者を特定しました(IPL60%,ダイオードレーザー40%)。ただこれらの中では家庭用脱毛器自体ではなく、エステでおこなれていた脱毛によるものだった。これらの症例を詳細に分析し、IPL脱毛器による眼障害のリスクを評価しています。IPL使用後の眼障害に関する20例の患者事例が特定され、これらの事例を詳細に分析しています。
結果について
- 患者の95%は女性で、平均年齢は40歳。
- 40%が保護眼鏡を使用せず、30%が使用中に保護眼鏡を外していた。特に3人の患者が脱毛器の発火している照射に直接見ていたと報告しています。
- 顔、特に眼の周辺部のIPL施術を受けた方が大半で、使用されたフルエンス(これは出力パワーのようなものです)は 20–24 J/cm2。
- 眼障害の症状としては、虹彩萎縮、前部ぶどう膜炎、網膜色素上皮の損傷などが確認された。
考察と提案
家庭用脱毛器による直接的な眼障害事例は確認されていませんが、エステなどの店舗用脱毛器の事例は潜在的なリスクを示唆しています。特に、家庭用脱毛器とエステの脱毛器の出力の類似性から、同様のリスクが存在する可能性があります。多くの消費者が適切な知識や訓練なしにデバイスを使用していることが、これらのリスクを増やしている可能性があります。また、家庭用脱毛器で実際に起こったとしてもなかなかそれを論文報告などする機会もないためあまり申告されていない可能性もあります。
家庭用脱毛器の製造者は、デバイスのパッケージや説明書に眼への危険性に関する明確な指示と保護メガネの使用を推奨するべきです。消費者や実践者は、眼障害の兆候をしっかりと見落とさずに必要に応じて迅速に医療機関にかかることが重要です。また、各国の規制当局は、家庭用デバイスの安全基準を再評価し、消費者の安全を確保するための措置を講じる必要があります。
研究の制限と今後の研究の方向性
今回のレビューでは家庭用デバイスによる直接的な眼障害事例の特定はできませんでしたが、限られたデータと文献の範囲の中で重要な洞察を得ることができます。今後の研究では、より多くの事例の分析と、家庭用デバイスの使用に関連する様々な側面についてのさらなる調査が必要です。
この研究は、家庭用光脱毛デバイスの使用に際しての眼への安全性に関する意識を高めることに寄与し、消費者、製造者、規制当局に対して適切な予防策と対策を促します。安全性を重視し、常に注意を払うことが、美容と健康を両立させるためのキーとなります。
- 虹彩萎縮(Iris atrophy): これは虹彩(アイリス)の組織が薄くなる状態を指します。虹彩は目の色を決める部分であり、この萎縮は様々な原因によって引き起こされる可能性があります。
- 前部ぶどう膜炎(Anterior uveitis): 前部ぶどう膜炎は、目の前部の炎症を指す用語で、通常は虹彩と毛様体(Ciliary body)の炎症を伴います。これは痛み、光に対する感受性の増加、視力の低下などの症状を引き起こすことがあります。
- 網膜色素上皮の損傷(Retinal pigment epithelial damage): これは網膜の一部である色素上皮層の損傷を指します。色素上皮は網膜の健康と機能に重要な役割を果たしており、その損傷は視力低下や視覚障害を引き起こす可能性があります。
表:報告の特徴について
特徴 | N (%) |
性別 | |
女性 | 19 (95%) |
男性 | 1 (5%) |
環境 | |
光脱毛を受けていた患者 | 18 (90%) |
光脱毛を行っていた患者 | 2 (10%) |
機器 | |
ダイオード | 8 (40%) |
IPL | 12 (60%) |
保護メガネ | |
使用していない | 8 (40%) |
処理中にずらしてしまった | 6 (30%) |
いつ起こったか | |
処理中 | 7 (35%) |
処理後数時間以内 | 4 (20%) |
処理後2日以内 | 6 (30%) |
実際の症状 | |
目の痛み | 12 (60%) |
光恐怖 | 15 (75%) |
視覚障害 | 12 (60%) |
目の赤み | 6 (30%) |
虹彩萎縮 (ダイオードによる) | 5 (38.5%) |
虹彩萎縮 (IPLによる) | 8 (61.5%) |
前部ぶどう膜炎 | 12 (60%) |
網膜色素上皮 (ダイオードによる) | 2 (50%) |
網膜色素上皮 (IPLによる) | 2 (50%) |
角膜 | 1 (5%) |
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記事執筆
- 森口翔 M.D. Ph.D
- 慶應義塾大学医学部卒業
- 慶應義塾大学医学部大学院博士課程修了
- 医療脱毛専門クレストスキンクリニック医師